私は、家に入るなり、お母さんに今日の結果を報告する。

演奏だけ見て帰ったお母さんは、

「すごいじゃない!!
聴いてて、他のグループより格段に上手だと
思ったもん。
良かったわね。」

とすごく喜んでくれた。

話すなら、今がチャンス?

「でね、帰りに奏先輩にね、来年、一緒に
EFアンサンブルに出ないかって誘われたん
だけど… 」

私は母の顔色を伺う。

「美音、あなた、ついこの間、勉強を頑張る
って言ってなかった?」

「………うん。」

「じゃあ、
ダブルエントリーは、無理じゃない?」

やっぱり。

「私もね、奏先輩にそう言ったの。
そしたら、奏先輩が勉強を見てくれるって
言ってくれて… 」

「……… 奏くんって頭いいの?」

「うん!
茜先輩ほどじゃないけど。
みんなが言うには、茜先輩は5教科で450点
超えてるくらい頭いいんだけど、でも、
奏先輩も400点は余裕で超えてるん
だって。」

ほんと、すごいなぁ。

「ソロの曲もあるのよ?
勉強と部活とエレクトーン、ほんとに
全部できるの?」

「やる!
あのね、私がいつもユーチューブで
聞いてる奏者さんがね、教えてくれたの。
音楽が大好きだからこそ、勉強を
頑張らなきゃいけないって。
なんかね、もし音大に行きたくなった
時にね、私立の音大はすっごく学費が高いん
だって。
だったら国公立の音大にって思った時に、
エレクトーンの学科がある国公立大学は、
1〜2校しかないらしくて、倍率が高くて
難しいんだって。
だから、音楽をやってもやらなくても
勉強は必要だって教えてくれたの。
だから、私、ちゃんと勉強するから。
だから、お母さん、やらせて。」