私たちがのんびりしてる間に出番が回ってきた。

私は、水に浸したリードを取り出して確認する。

うん、大丈夫。
いい感じ。

オーボエはリードと呼ばれる2枚の薄い板みたいなのを取り付けて、それを口に咥えて振動させて音を出す。

クラリネットやサックスなどの、リードを1枚だけ使う楽器は乾燥させたまま使用するけど、オーボエのように2枚使う楽器は、水に浸してある程度湿らせてから使う。

その湿らせ具合が音の良し悪しに大きく関わるので、調整が大変なのだ。

早く準備をしすぎると、本番前に乾いてしまい、いい音が出ない。

逆に浸し過ぎてもいい音は出ない。

今回は、いい感じで準備できてると思う。

私たちは、控え室から本番の会場へと移動する。

前の人が終わり、袖へ()けたのを見届けて、私たちは譜面台を持って出る。

落ち着いて準備をし、目を合わせて呼吸を合わせる。

私たちは顔を見合わせて、お互いの音を聴き合い、3人の音色を楽しみながら演奏する。

一応譜面は置いてあるものの、私たちはほとんど譜面を見ることなく、お互いの息づかいだけを感じて演奏を終えた。


結果は、私たちと茜先輩たち、奏先輩たちが金賞。

中でも、奏先輩たちは、県大会への切符を手にした。

金賞が3組も出るのは、うちの吹奏楽部では近年稀に見る快挙。

私たちは、みんなご機嫌で学校に戻った。