そこへ茜先輩が現れた。

「美音ちゃん、それ持ってってあげるから、
ビブラの応援、お願い。」

え?
なんで?

だけど、先輩にそんな事を言える訳もなく…

「はい。お願いします。」

と抱えた譜面台を茜先輩に渡した。

私は会場に戻り、奏先輩に声を掛ける。

「ビブラ、応援に来ましたぁ。」

「森宮、なんで?」

奏先輩が不思議そうな顔をする。

「茜先輩が譜面台を持ってくださったので、
手が空いたんです。
私、どこを持てばいいですか?」

「……… じゃ、俺の横。
階段、大丈夫か?」

「はい! 大丈夫です。」

私は、男子部員に混ざって、奏先輩の横に入る。

「せぇのっ!!」

掛け声と共に階段を上るが、
あれ? 私、全然持ってない?

それもそのはず。

男子部員は、みんな私より背が高い。

私の手より上で運ばれていくから、私にはほとんど荷重がかかる事なく、ほとんど手を添えているだけで階段を上がりきってしまった。

階段を上ってしまえば、あとは転がしていけば音楽室に着くから、こんなに人手はいらない。

「森宮、来い。
今度はマリンバ運ぶぞ。」

奏先輩に言われて、私は慌てて後ろをついて行く。

他数名の男子と共に、今度はマリンバを上げる。

マリンバは木琴なので、ビブラほど重くはないけど、下に金属の共鳴管が付いているので、そこそこ重い。

だけど、やっぱり私はほとんど役に立っていない状態。

なんだか申し訳なくなる。

なのに…

「森宮、よく頑張ったな。」

とまた奏先輩は頭を撫でてくれた。

今度は、くしゃくしゃではなく、優しくぽんぽんと。