そこへ茜先輩がやってきた。

「奏、アンコン(アンサンブルコンテスト)の
保護者発表会なんだけど… 」

「ああ、今、行く。
じゃ、森宮、頼んだぞ。」

そう言って、奏先輩は私の頭から手を下ろして、茜先輩の所へ歩いて行った。

奏先輩と茜先輩は、小さい頃から一緒だっただけあって、今でもすごく仲がいい。

私と智恵みたいなものかな。

お互いに言いたいことが、すぐに理解できるいい相棒みたい。

つうと言えばかあって、こういう2人の事を言うんだろうな。

だから、この2人が付き合ってるって噂は後を絶たない。

私はまだ男の人を好きになるとか、付き合うとか、よく分からないけど、いつか2人のように思い合える人に出会えたらいいなと思う。

「美音! 何やってるの?」

智恵が呼ぶ。

「あ、ごめん。」

私は慌てて戻る。

私たちはアンコンで木管三重奏をする。

オーボエの私とフルートの智恵、ベークラ(クラリネットB♭)の奈々美の3人。

「奏先輩、なんだって?」

奈々美が興味津々で聞いてくる。

でも、内緒って言ってたしな…

「別に。
オーボエ、頑張れって。」

「ええ? それだけ?」

「うん。
オーボエは2人しかいないから、来年の
夏までにもっと力をつけておくように、
だって。」

嘘は言ってないよね。

「じゃあ、来年の夏の前に再来週のアンコン
頑張るよ!」

智恵が言う。

「そうだね。
じゃ、初めから通すよ。」

私は2人の目を見て、呼吸で合図をする。


私たちのチームは1年生のエースだって言われてる。

音楽経験者3名のユニット。

初めてのアンコンだけど、悔いなく演奏できたらいいな。