横からかけられた声に振り向けば、そこには予想通り吉乃くんの姿があった。
その姿を今日も見れて 嬉しいと思ってしまった、なんて言えないけれど。
「吉乃くん、」
「まあ、偶然ってのは今日は嘘なんですけど」
「え?」
「先輩がいるかなと思って狙ってきました。こんにちは」
昨日と同じ、『消える、』が並べてある本棚の前。
抑揚のない声であいさつをした吉乃くんは、何も変わらない、普通なままの吉乃くんだ。
昨日のキスを忘れられていないのは私だけのような気がして、少しだけ恥ずかしくなってしまった。
そんな私を差し置いて、「そういえば」と思いだしたように吉乃くんが口を開く。
「今日、会長とは会いました?」
「え」
「昨日の今日だし、先輩にそんな行動力があるとは思ってないので、まだ別れてないのは前提としての話なんですけど。もしかしてこれから会う予定ですか」
吉乃くんは勘が良い。
そして、その発言全てにちゃんと根拠がある。



