何か・・違和感を覚える。
刑事課の一員になって、
僕も何度かこの場を経験してきた。
被害者と遺族が対面する遺体安置所。
その名前を叫び、
その体に抱きつき、
こちらが支えなければいけなくなるほど足腰から力が抜け、
部屋中に哀しみの嗚咽がこだまする。
その光景が目の前で繰り広げられる度、
毎回やるせなさで胸が苦しくなる。
遺された人だけでなく、
理不尽に命を奪われ、
結果的に“遺して”しまった死者も。
僕や豊川さんの前で、
“空気”の嗚咽を上げるから・・
身元確認の立ち会いは毎回辛い・・
はずなのに・・。
「もう帰ってもいいですか?」
「ご協力ありがとうございました。
ご遺体をお返しする日取りについては、
改めてご連絡申し上げます。」
視線の先、関本主任と話す平山コウスケからは何も感じられない。
一滴の涙も落とさないその表情からは、
哀しみも怒りも・・
かと言って現実が受け入れられていない状態でも無さそうで・・・
これじゃまるで・・“ただの他人”の遺体を見に来たみたいじゃないか・・。