「そうですか?でもそのおかげでこうして今涼子さんと一緒にいられるから嬉しいです」
彼の前にいる自分は、すごく自然体だった。
気を遣わなくていいし、愛のある言葉をくれる。
知らず知らずのうちに彼の甘い毒が回りかけていた。
「涼子さん、俺のこと名前で呼んでくださいね」
駅で電車を待っているときに彼が言う。
ずっと名字で読んでいた人を、名前で呼び始めるときって妙に緊張する。
そのタイミングが恋人になったときは特に。
「分かった。私にも敬語じゃなくていいよ」
これが同じ高校で部活の先輩後輩だったら問題だけど、他校なら別にいいだろう。
それを咎める人はいない。



