そうやって暮らしてきたって、どういうこと?

パパが会社のお金を使っていたのに、ママは怒りもしない。

それどころかこんなことが過去にもあったような空気だった。


「このお家気に入ってたのに、残念ね」

「また別のところに行って、お金を手に入れて買えばいいさ」

ふたりはそんなことを平然と喋っている。

ぐるぐると、世界が反転したようにめまいがした。


「未来ちゃん、落ち込まないで。ほら、未来ちゃんが大好きなお肉をママも盗んできたから」

「……は?」

「ママの万引き上手でしょ?」


じゃあ、今まで食べていたものは全部お店から盗ったものだったの?

今朝作ってくれた朝食が一気に喉まで上がってくる。


「パパもママも知ってるよ。未来ちゃんもお友達のものをたくさん盗ってたって。本当に上手よね。さすが私たちの娘だわ」

私のことを褒めるように両親はおいでと手を広げた。 


やだ。なにこれ。怖い……っ。

私は慌てて家を飛び出した。


違う。違う。違う。

私は高橋未来じゃない。

こんなの私が望んだ生活じゃない……!