「おはよう、未来」
次から次へと声をかけてくる人たちを見て、未来がどれだけ友達が多かったのかがわかる。
一応中学の三年間は普通に学校に通ったけれど、こんなに人から注目されることはなかったので、恥ずかしい気持ちもある。
「背中曲がってるよ。堂々としないと」
まつりに指摘されて、私は背筋をピンッと伸ばした。
まだ未来である自分に慣れないけれど、これから学校でも楽しいことが待っているんだと思ったら胸が大きく弾んだ。
「あれ、なんか未来、今日のメイク濃くない?」
そんな中で優香という名前の女の子が寄ってきた。頭にある情報では未来と特に仲良しだったようだ。
「え、そ、そうかな?」
未来ってどんなしゃべり方だったっけ。
こんなことならもっと未来の言葉遣いを観察しておけばよかった。
「いつもアイライン引かないのに今日はしてるし、チークの位置も変だよ」
化粧品にすら触ったことがなかったから、自分なりにいつもの未来に近づけようと頑張って化粧してきたつもりだったんだけど……。
「あはは。なんか失敗しちゃった」
とりあえず笑って誤魔化してみた。
「もうウケる。寝ぼけてたの?」
みんなには不自然に見えなかったらしく、ばれなかったと思う。
優香も笑ってくれたし、他の友達も私たちのやり取りを微笑ましいとでもいう感じで見てくれている。
よかった。
誰も私が本当の未来じゃないことに気づかない。
仮に変なことがあったとしても、まさか中身だけが入れ替わっているなんて、誰も想像すらしないだろう。
可愛い制服を着て、日の当たる教室にいて、友達に囲まれている生活。
ずっとずっとこんな風になりたいと思っていた。
私はごく普通の17歳の高校生になれたんだ。



