萩野まつりという少女の想像は、なんとなく頭で描いていた。
私のイメージではもっとダークな感じで、髪の毛もだらりと長くて。最悪血まみれの人が現れても、幽霊なんだから覚悟しなきゃと身構えていた。
けれど、まつりは良くも悪くも本当に普通の女の子だった。
「私、その、叶えてほしい願いがあるんです」
本題に入ろうとすると、急にまつりの目の色が変わった。
「後からの文句は受け付けてないから最初に言っておくね」
「な、なにを……」
「願いをなんでも叶えてあげる代わりに――あなたは大切なものをひとつ失うことになる。それでもいいのなら、亜美の願いを叶えてあげる」
まつりはにこりと微笑んだ。
願いを叶えてもらう代償は、大なり小なりあるんだろうなと思っていた。
正直、なにかをひとつ失うだけで、なんでも願いが叶うなんて、こんなお得なことはないと思う。
「大丈夫。だから私の願いを叶えてください」
交差点を行き交う車のテールランプが眩しく光る。
その中で、やっぱりまつりは笑っていた。
「じゃあ、亜美の願いを教えて」
幸せになりたい。お金持ちになりたい。そんな願いを抱えて交差点を訪れたこともあった。
でも今になって思えば、その時引き返してよかったと思う。
だって、幸せもお金も私がほしいと思っているものが一度にすべて叶う願いがここにある。
「私と高橋未来の人生を交換してください。これから私は未来として生きる。未来の全部がほしい!」
我慢できずに、声が大きくなった。
私が未来になる代わりに、高橋亜美は未来にあげる。
普通じゃない私の人生なんて、もういらない。



