「はは。こんなこと言ってんのに、よく学校でおはようとか平気で挨拶できるよね」
泉谷さんは璃子と早織と谷野ちゃんの鍵アカを次々と確認していく。
流れ作業のように動かしている指を見て、図々しいというか、私のほうが呆気にとられてしまって、スマホを奪い返すことも忘れてしまった。
「はい。ありがとう。久しぶりに面白いものを見たよ」
しばらくして、ようやくスマホが戻ってきた。
面白がっている彼女にムッとしながらも、同情されなかっただけマシかと心を落ち着かせた。
「泉谷さんは、いつもひとりだよね」
だから、こんなにさっぱりとした性格の人だとは思わなかった。
「うん。ひとりだよ。友達になりたいと思う人もいないし」
「え……なりたい人がいないから友達を作らないの?」
「当たり前じゃん。じゃあ、日比野さんは目の前に嫌いな食べ物があったら、わざわざ食べるわけ?」
「それは……食べない、けど」
「でしょ?」
こんなにも頭をガツンと叩かれる衝撃は初めてかもしれない。
だって私は、ひとりになりたくないから璃子たちと友達になった。
それがたまたま派手な属性の人たちで、自分の性格や価値観とは真逆にいるけれど、向こうが声をかけてくれて、友達の中にいれてくれてラッキーとさえ思っていた。
一度グループに入ってしまえば、抜けることはできない。
抜けたところで他のグループに入ります、なんてこともできないし、学校生活では少し行動を間違えただけで命取りになる。
スタートダッシュが肝心だと、入学前にいくつものシミュレーションをして、念願叶ってやっと友達ができたと思っていたのに……。
なんでこんなことになっちゃったんだろう。
ただ仲良くしたかっただけなのに、気づけばいつも私は一歩後ろにいて、捨てられないようにニコニコするだけの存在になっていた。
そういう気持ちを、あの三人にはとっくに悟られていたのかもしれない。



