その人物はスッと立ち上がって、階段を使わずに飛び下りる。
「危ない……っ」
とっさに声を出したけれど、彼女は平然と屋上のコンクリートの上に着地した。
「別に危なくないよ。いつもやってるから。で、誰と喋ってたの?」
給水搭にいたのは、私が密かにカッコいいと憧れていた泉谷さんだった。
おそらく私が屋上に来る前から泉谷さんはここにいたのだろう。
それできっと、周りには認識されないまつりと話している姿を見られてしまっていたに違いない。
どうしようと、不自然なくらい目が泳ぐ。
それでもなんとかごまかさなきゃと、口から出てきた言葉は……。
「あ、えっと、独り言だよ」
まさか鍵アカを見るために四番目の交差点の幽霊を呼び出した、なんて説明はできない。
「ずいぶん大きな独り言だね。ちょっとヤバいよ」
「う、うん。気をつける」
同じクラスメイトだけど、泉谷さんとまともに喋ったのは初めてだ。
和美人って感じのイメージがあったけれど、泉谷さんの口調はすごくサバサバとしていた。



