私の想像ではもっと色々な縛りがあって、強制されるものもいくつかあるのではないかと思っていた。
でも、まつりは自分のペースに引き込むというより、私に時間を与えて試しているようにも感じた。
「今、やめたらどうなるの……?」
「別にどうもならない。私があなたの前から消えて、あなたはまた同じ毎日を送るだけ」
「……同じ毎日……」
まつりを呼び出せるのは一度だけだと書いてあった。おそらくここで止めて後から気が変わったとしても、もう二度と彼女には出逢えない。
「私は私のことを必要だと頼ってくる人に憑くだけだよ。覚悟がない人と一緒にいてもつまらないもん」
「…………」
「私に叶えてほしいことがあったから呼び出したんでしょ? やめる? やる? どっちなの?」
まつりを呼んだのは勢いだったかもしれないけれど、決して遊び半分の気持ちじゃない。
「やる」
強制されたわけでもなく、自分で決めた。
すると、まつりはにこりと笑って満足そうな顔をした。
「じゃあ、契約成立だね。あなたの名前を教えて」
「日比野若菜」
「若菜。今から私はあなたのものだよ」
ふわりと、交差点に風が吹く。
白い菊の香りが鼻をかすめて通りすぎた。



