「私、成績が思うように伸びなくて中等部の頃から悩んでたんだ」
梨花が手すりを握りながら、ぽつりぽつりと本音を言いはじめた。
「教師になるって夢が遠くなるたびに美幸に嫉妬してた。それで派手なグループに入って夢から逃げたの。だからって、美幸を苦しめていい理由にならないけど……」
初めて聞いた梨花の本音。
きっと彼女なりの葛藤があったのだろう。
もしかしたら私をいじめることで、ストレス解消をしていた部分もあったのかもしれない。
「たしかに苦しいことばかりだったけど、もういいよ」
「美幸……」
「だって、私、梨花のこと許す気ないから」
そう言って梨花の髪の毛を掴んで、手すりの外に前屈みになるように押した。
私だけにひどいことをするのなら耐えられた。
でも梨花はその延長で大切だったシロのことも傷つけた。
その無念さは、どんなに償われても癒えることはない。
「ご、ごめんっ、美幸。わ、私、本当に反省してるの……っ!」
昼休みという騒がしい校舎では、いくら大声を出したところで誰も気づかない。
私は梨花の後頭部を押し続けた。
「えーそこまでしていいの? 本当にいいの?」
茶化すようにして、まつりは私たちの周りをうろちょろしている。
「うるさいから今は黙って」
「はーい」
まつりに黙ってと言ったことが梨花は自分が言われていると勘違いしたのだろう。
急に抵抗する力が弱くなった。



