「もう過ぎたことはどうでもいいよ。それよりまつりはさっきからなにを読んでるの?」
「ああ、これ?」
ベッドに腰かけているまつりが見せてきたのは、一冊の本だった。
「あ、それ私も見たことあるよ。たしか悪いことをした人が地獄に落ちて、そこから救いだそうと一本の蜘蛛の糸が伸びてくる話だよね」
小学生の時の教科書にも載っていた記憶がある。
「私、この話大好きなんだ!」
「へえ」
私はまつりから本を借りて、ペラペラとめくってみた。
「因果応報はこうして糸に例えられることが多いんだよ。ほら、因果はめぐる糸車って言葉もあるでしょ?」
「うーん」
私は首を傾げる。教師志望なのに勉強不足かもしれない。
「じゃあ、教えてあげる。因果はめぐる糸車の意味はね、行為の善悪に応じて、その報いが必ずあるってことだよ」
まつりはそう言って、クスリとした。
「つまり私のことを苦しめた梨花が同じように苦しむことは理にかなってるってことだね」
「さあ、それはどうかな」
曖昧な返事をして、まつりは再び本を読みはじめた。
やったぶんだけ報いを受けなくてはいけないのなら、まだ梨花への復讐は終われない。



