次の日。私は騒がしい廊下の物陰から梨花のことを見ていた。
「宮本」
階段をのぼっている宮本に梨花は声をかける。
「これ、宮本のじゃない?」
それは宮本がいつも腕につけているミサンガだった。
サッカー部の仲間たちとおそろいで付けているもので、次の大会で優勝するという願掛けも込められているらしい。
「うわ、本当だ。サンキュ」
宮本は梨花からミサンガを受けとる。
「切れたってことは、大会でいいところまでいくって意味じゃない?」
「はは、だといいけど」
普段はおちゃらけている宮本は、こう見えてサッカー部のエースだ。そして中等部の頃、そんな宮本に梨花は片思いしていた過去がある。
そのうちに彩芽と付き合いはじめてしまい、梨花はけっこうショックを受けていた。
ダメ元で告白しておけばよかったともらすほどに。
すでに宮本のことは諦めているだろうけど、梨花は彼の前だとしおらしい態度を見せる。
だからこそ、利用できると考えた。
もちろん宮本のミサンガを切ったのも、わざと梨花の前に落としておいたのも、私がまつりに頼んでやったことだ。
「今だよ。伝えたとおりにして」
「はーい」
まつりに合図を出した直後、梨花はバランスを崩すように前に倒れた。
「……あぶないっ!」
宮本はとっさに梨花の体を支えた。
その反動で階段から足を踏み外して、ふたりは仲良く転げ落ちていく。



