「まつり。あれを割って」
私は自分の机に置かれた花瓶を指さした。
「はーい」
軽快な返事のあと、パリンッ!!と飛び散るように花瓶が割れた。
「……きゃあっ、痛い! な、なんなの?」
その破片は梨花に向かって飛び、人差し指からは血がでていた。
切り傷から滲む真っ赤な血を見ながら、私は改めて梨花への復讐を誓う。
こんなのはスタートラインでもない。
梨花が地獄を見るのは、これからだ。
梨花はそのあとすぐに保健室に行った。
ちょっと切っただけなのに大袈裟だ。
人のことは簡単に傷つけられるのに、自分が傷つくことには弱いらしい。
「なんで急に割れたんだろう」
まだ騒然としている教室で、不思議そうに割れた花瓶を見ていたのは彩芽だった。
「絶対に触るなよな」
そんな彩芽がケガをしないように宮本は注意していた。
花瓶は担任が片付けた。というより、証拠隠滅と言ったほうが正しい。
私の机に菊の花が置かれていたことをとがめもしないで、通常どおりのホームルームが始まった。
「梨花、大丈夫!?」
そのうちに梨花が教室に戻ってきた。
「平気だよ。みんな心配してくれてありがとうね」
梨花はまだ余裕の顔で笑っていた。



