頭の中はシロのことばかり。
誰にも言えない悩みをシロだけは聞いてくれた。
味方なんていない私のことをシロだけが慰めてくれた。
シロがいなくなってしまったら、私はまたひとりぼっちだ。
周りがやけに静かな気がして顔を上げると、教室には誰もいなくなっていた。
時間割を見ると次の授業は教室移動だった。
……また保健室に行こうかな。
でもさすがに何度もベッドでは休ませてくれない。
よろよろとした足で歩き出すと、床に置かれていたカバンにつまずいた。
そのカバンには見覚えがあって、それは梨花のものだった。
ひっくり返ってしまったカバンを戻そうと膝をつく。
と、その時……。カバンの外ポケットから切れ端のようなものが出ていた。
なんだろうと気になって、私はするすると引っ張ってみた。
……ドクンッ。
心臓が大きく跳ねる。
それは私が首輪代わりとしてシロに付けてあげた青色の布だった。
……な、なんで? どうして?
いろんな考えが頭の中を廻っていると、誰かが勢いよく教室に入ってきた。
「は? なに人のカバン触ってんの?」
険しい顔をした梨花が私に近づいてくる。
「……ね、ねえ、これはなに?」
私は布を握りしめて尋ねた。
「さあ、なんだろうね?」
「とぼけないでよ。これは私がシロにあげたものだよ」
「へえ、あの犬シロって名前だったんだ」
感情を抑えられない私とは違って、梨花は涼しい顔をしていた。



