私こと伊東美幸は現在、中高一貫校に通う高校一年生。
エスカレーター式に中等部から高等部の校舎へと移動して半年。
学校の雰囲気も同級生たちも変わり映えしない中で、私には大きな悩みがあった。
「うわ、来たよ。一気に空気が悪くなったし」
それはクラスメイトである麻生梨花にいじめられていることだ。
くじ引きで決めた席は運悪く梨花の前になってしまい、授業中でも椅子を蹴られたり、知らない間に髪の毛を切られていたこともある。
「転校とかしないかな。マジで顔を見るだけでムカついてくるんだけど」
梨花の言葉を聞いて、周りの人もゲラゲラと笑っていた。
最初は些細なことだけだったのに、いじめは日に日にひどくなっている。
梨花の悪意が移ったように他の人からも嫌なことを言われる毎日。
今では想像もつかないことかもしれないけれど、実は私と梨花は以前とても仲がよかった。
中学の入学式の時にたまたま席が隣同士になり、そこから会話を重ねるたびに意気投合した。
なんでこんなに気が合うんだろうと不思議なくらい梨花とは波長がよく似ていた。
それからは自然に行動を共にするようになり、教師になるという夢までもが同じだった。
このままずっと友達でいられると信じていたけれど、急に梨花は変わってしまった。