みんなの目は節穴だ。
本当に病院に行ったほうがいい。
ぶつぶと文句を言いながら帰り道を歩くと、家の前にお母さんがいた。
仕事が休みのお父さんと出掛けるところのようだった。
「お父さん、お母さん、どこ行くの?」
声をかけると、ふたりの動きが止まった。
「どなたですか?」
……え?
うそ。お父さんたちも私のことが分からないの?
「わ、私だよ。桜に決まってるじゃん」
ふたりは顔を見合わせて困った顔をしていた。
「本当に私だよ! 信じてよ!」
「うちの桜はそんな見た目じゃありません」
「変わったけど私なの! 可愛い娘で自慢になるでしょ?」
「しつこいと警察を呼びますよ」
お父さんは他人行儀な言い方で、本当にスマホの画面をタップしはじめた。
「警察なんてやめてよ!!」
そう叫ぶと、お父さんの手をお母さんが握った。
「あなた、もう行きましょう。怖いわ」
そして両親は車に乗って、慌てて私から離れていった。
なんで誰も私のことが分からないの?
可愛くなりすぎたから?



