春に生まれたから、頬がピンク色だったから。
名付けた理由はひとつではないらしいけれど、自分の容姿と名前が一致していないのもコンプレックスだった。
「本当になんでも願いを叶えてくれるんだよね?」
「うん。もちろん!」
浮かんでいる願いはいくつもある。
涼香と翼くんを別れさせること。
私のことを貶めた人たちに復讐すること。
ブスだと言った人たちを黙らせること。
だけど、一番は全員を見返してやりたい。
こんな悔しい思いは二度としたくない。
「私は誰よりも可愛くなりたい」
可愛くなれば、私の世界はきっと変わる。
「いいよ。でもその前にひとついいかな」
「願いをなんでも叶える代わりに、大切なものをひとつ失う、でしょ」
「やだー。私が言いたかったのに!」
評判どおり、まつりは子供みたいに口を尖らせていた。
「私はなにを失っても構わない。だから、私に力を貸して」
「わかった。じゃあ、今日から私は桜に憑くね」
また心臓が大きく跳ねる。
これは恐怖じゃない。希望の高鳴りだ。



