幽霊高校生のまつりちゃん



その日の帰り道。涼香は制服が水で濡れてしまったので、翼くんのジャージを着ていた。


「大丈夫?」

「うん。翼くんがいるから平気」

嫌がらせをされるようになって、ふたりはますます距離が近くなっていた。


翼くんはつねに涼香のことを守っているし、教室移動の時も涼香は彼にべったりなので、私と行動することは少なくなっていた。


「あのさ、周りが落ち着くまでちょっと翼くんといるのはやめたほうがいいんじゃないかな」

涼香の行動は女子たちをさらに逆撫でしてるだけ。これ以上ヒートアップしてしまったら、本当になにをされるか分からない。


「なんで? 翼くんは俺から離れないほうがいいって言ってくれてるよ」

「うん。でもさ、男子の感覚と女子の感覚は違うじゃん。翼くんがああやって教室で怒ることも、女子たちからしてみたら面白くないんだって」

「大丈夫だよ。なにかあれば翼くんに……」


「翼くん翼くんって、うるさいな」

恋に盲目になっている涼香についイライラしてしまった。


「こんなこと言いたくないけど、やっぱり抜け駆けした涼香も悪いところがあったと思うよ」

翼くんがみんなのものというルールはたしかにおかしかったかもしれない。

影で告白して玉砕していった人もいるので、ルールを破っていた人は涼香だけじゃない。

でも、付き合ってから翼くんは自分だけのものって感じで、教室でも引っ付いているのは違うと思う。


「抜け駆けじゃないよ。私は翼くんのことが好きだから、好きになってもらえるように努力してただけ」

「そうかもしれないけど、翼くんのことを好きでいた人の気持ちもわかってあげなくちゃ」

「わかってるけど、それに気遣ってたら私は彼女なのに翼くんと話すこともできないよ」

涼香の言い分も理解できるけれど、やっぱり浮かれている部分もあると思う。


「私は本当に翼くんに振り向いてほしくて色々とやった。それでやっと彼女になれたの」

「…………」

「普段から女の子扱いされてない桜には分からないかもしれないけど、可愛く思われるって本当に大変なんだよ」


涼香の言葉にトゲを感じた。

女の子扱いされていない私を見下しているような、そんな私は可愛くないと言っているように聞こえてしまった。