「やっぱり私のことそんな風に思ってたんだね」

友香が冷静に私のことを見ていた。


その目は悲しんでいるわけでもなく、呆れているわけでもなく、まるで私に対しての感情がゼロになったような視線だった。


「私は亜子のこと親友だって信じてたよ。でも亜子はそうじゃなかったんだね。ばいばい。もう、亜子とは話さない」

そう言って、友香は私とおそろいの腕時計を自ら外した。

ざわめきが収まらない空気の中、私に背を向けて友香は振り返らずに去った。


「ねえ、亜子」

ひとりになり、まつりが再び声をかけてきた。


「言い忘れてたけど試験の時。英語と理科の解答欄がズレてたよ」

「……え」

「チラチラと友香のことをあざ笑いながら気にしてるからだよー」

つまり不合格は誰のせいでもなく、自分のせい。 


「でもさ、落ちてよかったんじゃないかな。だって、成績が上げていく友香が怖いからって私を頼りにしてきた時点で、亜子は友香に負けてるもん」

そう言われた瞬間、全身の力が抜けてしまい、私は地面に崩れ落ちた。


「じゃあね、亜子。裸で街を一周するならこっそり見にくるね」

明るいまつりの声は、私の耳に聞こえていなかった。