幽霊高校生のまつりちゃん



……え、ま、待って。どういうこと?

たしかに私は友香の勉強が不得意になるように願った。


実際に友香は基礎問でさえ解けなかった。

なのに、なんでこんな難しい問題が解けるようになってるわけ?

沸々と湧いてくる不安を必死に押し殺して、私は授業が終わったあと、すぐにまつりに詰め寄った。


「……なんで友香の勉強ができるようになってるのよ!!」

人気のない非常階段でまつりを怒鳴った。


もしかしてなんでも願いは叶うけど持続性はないとか?

もしくは数日経ったら元に戻ってしまうとかそういうこと?

そんなの知らない、聞いてない。


「怒られるなんて心外だなー。私はちゃんと亜子の願いは叶えたよ?」

「じゃあ、なんで!」

また声を張り上げると、まつりが怪しげに笑った。


「亜子は友香の顔を見てないの?」

「は? 顔?」

「すごーく疲れてて目の下には(くま)ができてた。寝る間も惜しんで毎日毎日猛勉強してるんだろうね」

まつりは風で舞う落ち葉をわざと足で踏んで、グシャリと潰した。


「だ、だからなんなの? 私は友香の勉強を不得意にしてってちゃんと頼んだでしょ」

「はあ……。説明しないとわからないなんて亜子って勘が悪いね」

「なっ……」

「私は亜子の望みどおり友香の勉強を不得意にしたよ。それによって学力は下がった。でも友香は取り戻したんだよ。努力っていう自分の力でね」


……努力? 取り戻した?

私がまつりに願ったのは一週間前。

たったそれだけの期間で勉強ができていた頃、いや、それ以上の学力になったっていうの?


「友香はすごいね。普通は諦めちゃうのに諦めないんだもん」

「……や……めて」

「これだったら受験までには間に合うかもね」

「……や、めて」

「まさにシンデレラストーリーじゃない? 落ちこぼれだった友香がみんなの憧れるお嬢様学校に行けちゃうんだもん」


「やめてって言ってるでしょっ!!」

まつりに掴みかかったけれど、無情にも手はするりと通り抜けた。

その反動でよろけた私は壁にぶつかりそうになり、ギリギリで踏み止まっていると……。


「ねえ、亜子は諦めちゃえば?」

私の背後にぴたりとまつりが憑いていた。