友香の学力が下がってから一週間が過ぎていた。
手のひらを返したように群がっていたクラスメイトたちも落ち着いて、友香は静かな学校生活を送っている。
そんな中で、今日は私を訪ねて後輩が教室にきた。
「片桐先輩って、聖学を受験するんですよね? 私も自分が中三になったら考えたいって思ってるんですよ」
それは私のことを慕っている子のひとりだった、
「えーそうなの? じゃあ、もし同じ高校に行けたらまた先輩後輩になるね」
「はい!」
みんなからも期待されているし、もう自分が聖学の生徒になれる想像しかできない。
上機嫌の中、校舎にチャイムが鳴り響いて数学の授業が始まった。
すでに二学期で学ぶ範囲は終わりに近づいていて、授業の大半が入試に出やすいとされている応用問題をやるようになっていた。
「じゃあ、誰に解いてもらおうかな」
先生がクラスメイトたちの顔を見渡した。そして指名されたのは目が合った私ではなく友香だった。
「鈴木。前に出てやってみろ」
「……は、はい」
友顔は自信がなさそうにゆっくりと立ち上がった。
黒板に書かれていた問題は私が模試でボロボロだった多項式の計算だった。
うわ、友香可哀想。
けっこう難しい問題だし、なにより友香は私の願いによって勉強ができなくなっている。
期末テストの結果がよかったぶん、ここで間違えたら……と想像すると、自然に口元がゆるんだ。
「できました」
友香は小さくつぶやいたあと、チョークを置いた。
みんなが注目している視線の先で、先生が答えを見て拍手した。
「正解だ。ミスしやすいひっかけ問題なのによく分かったな! すごいぞ!」
先生に賛同するようにクラスメイトたちも友香に向けて拍手を届けた。



