「説明会、行きたいところあるの?」
「わ、亜子か。びっくりした」
「気になるところがあるなら付き合うよ?」
私はひとりでどこにでも行けてしまうタイプだけど、友香はそうじゃない。
引っ込み思案で自分がしたい質問も積極的にできないだろうから、なにか助けになれればと思った。
「ううん。平気。まだ考え中だから」
「そっか。あ、今日の帰りは先に帰るね。私、塾だからさ」
「うん。わかった」
駅前にある塾はすべて個別指導になっている。
学校の先生と違ってすごく厳しいけれど、聖学に受かるためならなんでも頑張れる。
塾が終わったのは午後九時だった。
勉強中はずっと集中しているので、解放された途端にお腹が減るのはいつものこと。
外灯が照らす道を歩いていると、ちょうど昨日の本屋が見えた。
ちょうど新しい付箋を見たいと思っていたので、ついでにパンを買おうと足は本屋へと向かう。
「あれ、友香?」
ちょうど自動ドアが開いた瞬間に、友香が店から出てきた。まっすぐに帰ったと思っていたのに、格好は制服のままだった。
「よかった。今ね、亜子のこと迎えにいこうと思ってたの」
「え、そうなの? なんで?」
「うーん。ちょっとね」
友香は歯切れ悪く言葉を濁らせていた。
「亜子はもしかして本屋に用だった?」
「用っていうか、付箋を見たあとに、パンでも買おうかなって」
「パン屋は八時で終わっちゃったよ」
「えー、嘘」
付箋は見たいだけだったから今日じゃなくてもいいけど、パンは食べたかった。だってもう口がパンの気分になっている。



