「ずっと微笑ってて」

「!……え?」

「今みたいに、ずっと微笑っててよ」

優しい声が、私から波の音さえ消した。
聴覚も、視覚も……。五感の全てが、彼だけに惹きつけられる。

(げつ)の願いが、私の心に沁みて……。瞳から、溢れた想いがゆっくりと流れ落ちた。

「それだけで、充分なんだけど……。今日はせっかくだから、もう少し贅沢言っていい?」

「っ……?」

「ずっと俺の傍で、微笑っていて下さい」

優しい、愛おしい願いに、心が弾ける。

ーーああっ、どうしようっ。
想いが、止まらない!もう、何も出来ないッ……!!

いっぱいに満たされた心で、溢れてくるのは幸せの涙ばかり。
そんな私に、(げつ)は言葉を続けた。

「ずっと、一緒に帰りたいと思ってた。故郷の里に、(おう)と一緒に帰りたい、って思ってた。
……けど、もういいんだ。俺の里は、”ここ”だから」

そう言った彼が、私の左手に頬をすり寄せる。