「白坂くん、なんでそっち向くの? 私の時はダメって言うのに……」


「……なんなのお前、」



私から白坂くんの顔を覗き込んだその時、



「きゃっ!!」



白坂くんが強引に私を抱き寄せて、胸の中に閉じ込めた。



「ダメ。無理。今俺の顔見んな」

「っ、」


……ちょっと黒い白坂くんの口調。


胸に顔を押し付けられて、白坂くんの爽やかないい香りをめいっぱい吸い込んでしまった。


クラクラする。

まさかの展開に鼓動はたちまち加速を増していく。



「白坂くん……あの、ゆっくり……っ、お、お手柔らかに、お願いします……」



胸の中でポツリと呟くと、白坂くんの腕に少し力が込められた。



「誰に言ってんだよ。そんなの、手加減出来るわけないだろ……」


「……!?」


耳元で囁かれ、今度は私が固まってしまったのだった。



───これはほんの序章に過ぎなかったと、夢にも思わずに。