「なによ涼太ってば! そんなに嫌なら別行動すればいいじゃん」
キミの声が、俺には鮮明に聞こえた。
ヒマワリ柄の浴衣を着たキミはとびきり可愛くて、これだけの人がいる中でも俺にはキミしか見えなかった。
わざと距離をとる隣のアイツが照れくさそうに歩いている。
「なぁ、凪。あれ……剣崎じゃねえか?」
雅の硬い声に、我に返った。
「剣崎は親父が組の人間で、頭のネジがぶっ飛んでるヤバい男だ。祭りにまで顔を出していたとはな」
「見つかったらまた片割れ狩りとか始めそうだな。めんどくせぇことになる前に、俺は撤退するよ」
「は? 時期に店番も終わりだ。だからもう少しだけ付き合えよ、凪」
この時、雅がそう言ってくれてよかったんだと思う。
じゃなきゃ、俺はキミの元へ行けなかったから。



