【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ



「お前っ! 小夏のことまだ見てるのか!?」



キミがいない時、アイツが俺に何度文句を言いに来たことか。


相変わらずヒーロー気取りで、ピタリと張り付いてるから俺はキミに近づけなかった。


そんな俺にも、チャンスが巡ってきたのは、四年生の終わりを迎える頃だ。



“4年2組 みなせ 小夏”


学校の帰り道、もうすぐ家が見えてくるところで、落し物を拾った。


チャンスだと思って歩いていたら、少し先にキミがいて、俺はなんて声をかけようか考えながら歩いた。



不意に足を止めたキミが振り返る寸前、なぜか緊張した俺は物陰に身を寄せて、姿を隠した。


まさかそれが仇になるとは思わずに。


追いかけたら、どうやら不審者だと思われたらしく、怖がられた。


近所のおばさん達が「大丈夫かい!?」と、キミに声をかけていた。


「白坂さん家の凪くん、今この辺に不審な人がいるそうなの! だからあなたも、早くお家に入りなさいね!」



なにこれ、だっさ……。



結局──



「お前が拾ったのか!? よし! 俺が小夏に返すんだ! 寄越せ!」



まるで自分の手柄みたいにアイツに帽子を奪われた。


チャンスは呆気なく消え去って、


「涼太ありがとう!」って。


キミの笑顔までアイツにもっていかれた。