たった一度、そんな俺にも転機がきた。
それは夏祭りの前日。
赤森神社の祭りの前の日は、空には分厚い雲が広がっていた。
「ねぇーーー!! 明日って晴れると思う?」
道路を挟んで、向こう側にいるはずのキミが、俺に声をかけた。
それは俺にとって、真夏の日の奇跡だった。
「……え?」
俺は固まって動けなかったし、夏休みのプールの授業でもらった「よくできました」のシールを落としそうになった。
だってキミが、俺を見てる。
アイツじゃなくて、俺に声をかけてる。
「私ね、雨女って言われちゃったの! いーっつも遠足とか遊園地に行く日は、雨が降るの!」
しょんぼりと泣きそうな顔をするキミ。



