最初はそれだけだった。
マイホームだとか言って親父が買った青い屋根の家に越してから、気づけばいつでも目でキミを追いかけていた。
自分の隣であんな風に笑いかけてくれる女の子が、いつもいる。
あのヒーロー気取りの男の子は幸せ者だろ。
次の日は小学校の入学式で、当然俺はキミと出逢えるんだってなんの迷いもなく信じていた。
だって、道路を挟んでいようとも、近所だったから。
けど、その日、どこにもキミの姿は見当たらなかった。
あの男の子ならいるかもしれない。
ヒーロー役しかやらないアイツなら。
初めての学校、初めて踏み入れた校舎の中を、小さな足で探し回った。
だけど、あのふたりだけがどのクラスにも学年にも存在しなかった。
「え? なにを言ってるのよ、凪。あっち側は東小だよ?」
そして俺は気づいた。
この道路は、
俺とキミの境界線だってことを。



