「剣崎。お前の獲物は俺でしょう?」
月を背負った白坂くんが、口角を上げて断定的に囁いた。
私は声にならない声で、白坂くんの名前を呼ぶ。
「──凪、やっと会いに来てくれたか」
不気味な声を落とした剣崎の腕を、白坂くんが背中で拘束している。
「剣崎、今夜で鬼ごっこは終わりだ」
「ははは。そのつもりで来ているんだよ? でもね、鬼ごっこなら大勢の方が楽しいよ凪」
とびきり楽しい夜にしようね、と子供みたいにはしゃいだ剣崎が、白坂くんの腕を振り払った。
……大勢?
ここには暴走族の男達は不在で、なぜだか剣崎しかいないのだ。
けれど、剣崎は堂々と胸を張っている。