瞼を必死に開いて、涼太が私を見る。

ごめん、と痛々しく口を動かした。



「な、に……涼太?」


耳を傾けて涼太に近づいた。


「俺……本当は……」


本当は、ともう一度繰り返す涼太の瞳は、涙が滲んでいる。



「去年の夏……小夏を、置き去りにして逃げたんだ……」



置き去り……?


涼太の口から吐き出された言葉が、あまりにも現実感がなくて、脳に浸透していかない。



「怖くて怖くて……お前がぶっ倒れそうだってのに……逃げ出したのは、俺なんだ……」



涼太の声に心臓が潰れそうになった。

涼太が逃げた?

私を置いて、涼太が……?



「嘘だよそんなの……涼太、私のこと助けてくれたじゃん……!」



男達に殴られたって、涼太は私のために怖くても──



「あはは。そうそう。途中まではよーく頑張ったよね、涼太くん?」


「途中まで………?」