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一時間目の授業が終わって私は気づいた。
昨日、涼太と口論になったところを白坂くんが助けてくれたのに、さっきそのお礼を言いそびれてしまったことを。
暴走族との関わりがあるかもしれない浮上説に、ついつい気をとられてしまった。
「小夏ー! 次体育だよ?」
「あっ、そうだった! トイレ行ってくるー!」
放課後までにお礼を伝えた方が……。
だけど、白坂くんの周りには、いつも先輩を含む女の子がわんさかいるしなぁ……。
考えながら高速でトイレを済ませ、個室を出た。
「あ、ケンタッキーだ」
「え?」
ケンタッキー?
鉢合わせたのは、昨日涼太に告白したっていう若宮さんだった。
「あの、ケンタッキーって……?」
「だって、柳くんがよく言ってるよ? 腐れ縁のアイツはいつもケンタッキーばっかり食べてるって」
「あ、そうなの。実はケンタッキーの大ファンで主食にしたいくらい大好きなの……って……」
涼太の奴、なに言ってんのよ!!
「ふふっ。ケンタッキーばっかり食べてたら栄養偏っちゃうよぉ?」
くるんっと可憐に振り返った若宮さんのハチミツ色の髪がふわふわ揺れた。
同時に甘い香りまて飛ばすという技をお持ちとは……恐るべし。



