「逃げてもいいんだよ涼太くん。痛いのはもうやだよね? それともこのまま、代償を払ってくれるのかい?」



涼太の服を掴みあげると、剣崎は容赦なく頬を張った。


パシンッと響く渇いた音に私は目をつぶる。



「俺の気が済むまで苦痛を与えてあげたいけど、泡吹いて倒れちゃうかもしれないね。それでも、覚悟はいい?」



眉を歪め、唇を引き伸ばして剣崎が不気味な声を落とす。


片手で涼太の顎を押さえ込むと、右手で殴りつけた。



「……やめてよっ!! どうして……こんなことするの!」



金縛りが解けたみたいに私は叫んだ。

涼太の鼻から鮮血が滴り落ちる。

どくどくと溢れ出るそれは、口に流れていった。



「小夏……早く、逃げて………」


「嫌だ……っ、」


怖くて、仕方なかった。