「ああ、今年もヒマワリ柄なんだね」
──忘れはしない、あの男の声がした。
「あはは。ふたりとも、そんなに怖がらないでよ? 俺はバケモノじゃないんだから。大丈夫だよ。今は俺ひとりなんだ」
知り合いに遭遇したみたいにすらすら話す男の声は、私達にとって恐怖でしかなかった。
嘘だと叫びたくなる。
首をひねって見上げた先には、闇夜に溶ける漆のような黒い髪が飛び込んできた。
どうして、この人が……。
「いいねぇ、その怯えた顔。俺、大好きなんだ。俺の性癖ってやつかな?」
ニコリ、と微笑んだ剣崎の目は少しも笑っていない。
ぐらりと視界が歪んでいく。
……今夜も、ずっとこの会場にいたの?
涼太はそれに気づいたからこんなに怯えた顔をしていたの?
背中に冷たい汗が流れていく。
「どうしたの、涼太くん」
「っ、」
カッと目を開き、慄いた涼太は微動だに出来ずにいる。



