「今……白坂くんにメッセージ送るところだったの」
慌ててスマホの送信ボタンをタップした。
「小夏……さっさと帰るぞ!」
「ちょっと、待ってよ……っ、」
痛いくらいに力づくで二の腕を引っ張られた。
「帰るって、涼太……若宮さんは? さっきまで一緒だったよね……?」
「若宮は帰した……」
「な、なんで? 花火、もうすぐなんだよ?」
一緒に見るんじゃないの?
若宮さん、この日を楽しみにしていたのに。
涼太の目が不自然に泳ぐ。
明らかに動揺している涼太の手が小刻みに震えているのが伝わってきた。
……涼太?
「小夏、頼むからお前ももう帰った方が──」
涼太がガタガタと唇を震わせた直後、
「──こんばんは」
背後から飛んできた、やけに落ち着き払った声。
私と涼太は、目を見開いて顔を見合わせた。
その声は、私と涼太に傷として深く刻まれているから。



