あれ……? 涼太?
鷹村ベーカリーの後ろを通る涼太の姿が目に留まった。
ちょこんと涼太にくっついて隣を歩くのは、誰が見ても可愛い若宮さんだ。
桃色の浴衣がとてもよく似合っている。
よかった、ふたりで一緒に来れたんだね。
心の中でそう呟いた時には、人並みに飲まれて、すぐに姿は見えなくなった。
「凪、俺が言わなくてもわかってはいると思うが……来てるぞ。今年も」
鷹村くんの硬い声を拾った私は、再びふたりに視線を戻す。
「わかってる。覚悟してんだよ、俺だって」
「そうか。だが、奴らは今夜のために凪を泳がせてきたんだろうから、用心しろよ」
──今夜のために?
「大丈夫だ水瀬。凪がついてるからな」
心の中を読み取ったみたいに、鷹村くんが私を見て曖昧に笑った。



