「夏祭りの日も迎えに来るから」
「あ、ありがとう……」
住宅街に入り、私は白坂くんの帽子を被り直してお礼を言った。
「水瀬は浴衣着てくんの?」
「まだ考えてなかったけど、着よう……かな」
去年はヒマワリ柄の浴衣を初めて着たっけ。
せっかくの浴衣だったのに、嫌な思い出になるとは、思ってもみなかったな……。
「見せてよ? 俺、ちゃんと見たいし」
ちゃんと……?
浴衣を着たのはただの一度だけのはずなんだけど……。
「………えと? わかった」
私は戸惑ったけれど、深くは考えずに返事をした。
お母さんに頼んで、浴衣を出しておいてもらわなきゃ。
暑さから逃げるように日陰を選んで白坂くんと歩いていたその時、家まであと少しのところで、私の足が止まった。



