「どこまで自由自在なんだよ」
「白坂く……」
「胃袋まで掴もうとすんな」
「っ、」
あれ……?
白坂くん、ツーンとした表情をしてるのに、頬が赤く染まって見える。
「なにが欲しいんだよ……ったく」
白坂くんは不服そうに吐き出すと、くしゃりと前髪を握って顔を隠す。
「……本、これでいい?」
私は返事も出来ず、頷くのが精一杯。
「ありがとう……いいの?」
白坂くんはそのままレジに本を持っていき、私がお財布を取り出している間にお会計を済ませた。
買ってもらっちゃって、悪い気がする……。
「俺以外に食べさせないでね?」
本屋さんを出る時にそんなことを言われた。
「それ以外の目的なんて、ないよ……?」
炎天下の下を歩きながら呟くと、じわじわと身体が熱くなった。
「……水瀬のくせに言い返してくんなよ」
コツンと手の甲で叩かれた。
ドキドキしながら白坂くんの隣を歩いて、来た道を引き返していく。



