「なにそれ」
「えと、ちょっと料理してみようと思ってて」
私がやりたいことは料理だ。
といっても全然出来ないんだけど。
「は? 誰に食わせんの? まさか涼太くんとか言わないよね?」
「涼太!? 違うよ……っ! 食べてもらいたい人が、いて……」
「未来の旦那に作ってやる練習か?」
すっ、と隣に立った白坂くんが、黒い口調で訝しげに私の顔を見やる。
「……白坂くんに……」
「っ、」
素直に白状すると、白坂くんがキョトンとして固まった。
「いつも、桜子さんのおかずを美味しそうに食べてるの見て……私も、作ってみようかなって思ったの……っ」
全くもって初心者だから、夏休みを利用して練習しようと思ったのだ。
「お前ズルいだろ」
「……えっ、」
私の手から「初心者でも簡単!おうちでレストランの味」と書かれた本を奪う。



