「え……」


しばらくスマホの画面を食い入るように見つめた。


我慢出来なかったって、もしかして……。


ほんの少し、淡い期待を抱いて私は玄関を飛び出した。



「嘘……ホントに……?」


外に出ると、私の家のそばから僅かに離れた場所に、白坂くんがいる。


陽炎に揺らいで見える。


けど確かに、今ここに白坂くんがいる。



「もっと早く来てくれてもいんじゃない?」


待ちくたびれた、と腰をおろしていた白坂くんが立ち上がった。


黒いパーカーはとても夏らしくない。

ミルクティー色の柔らかい髪を隠すみたいに被っていたそのパーカのフードを、ふわっと取る。



「……暑そう」


私の口から自然と声が零れた。



「久しぶりなのに、第一声がそれかよ」


「うぅ……だって、すごく暑そうだし」



こんな真夏に黒いパーカーなんて着てるのは白坂くんくらいだよ。