その男達が私の前を通過する。
数人の男達が囲んでいる中心にいる男は、威厳に満ちた様子にも見える。
涼太よりも背が高い。
ぼんやりとした視界で見えた。
男の人にしては、少しばかり髪が長いようにも思える。
暗闇にも溶けそうな黒い髪が、夏風を誘う。
「あ、涼太」
男達の横を通る涼太の姿を見つけて、短く呼んで手を挙げる。
その直後だった。
「あ、すんません!」
かき氷を両手に持って急いでこちらに駆けてくる涼太が、その男にぶつかったのだ。
「いえ、こちらこそ」
少し遠くにいる男の声がする。
苦く笑った涼太が、もう一度すみません、とペコっと頭を下げている。
そして私を見つけた涼太は、へへっと笑って私の元へ駆けてこようとした。
屈託のない無邪気な笑顔。
この夜に見た、涼太の最後の笑顔。
「───って、言うわけないだろう?」
──ドサッ!
涼太の手からかき氷が放り出される。
え……?
ベチャッと落下したかき氷が、地面に赤と青の染みをつくる。



