赤い提灯がぶらさがる下で、私は涼太を待っていた。
時折ぽつぽつと人が行き交う様子をぼーっと見つめていると、身体がだんだん重くなっていって、呼吸が浅くなった。
やっぱり花火を見たいだなんて意地を張らずに帰ればよかったかな。
その時、人混みを縫うように、「おっと!」なんて言いながら、かき氷を両手にこちらに戻ってくる涼太が見えた。
ふふっ、と笑顔が零れる。
「……やべぇだろ。帰った方がいいって!」
そこへ舞い込んだ、通りゆく人の声。
涼太のそばには大手を振って歩く男達。
「いやねぇ……がらが悪そうで。お祭りが台無しじゃないの」
小さい子供達を連れたおばあさん達が、そそくさと立ち去っていく。
目が合った大人たちは迷惑そうに視線を投げたけど、すぐに睨み返されると、罰が悪そうに境内を足早に通り過ぎていった。



