【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ



「……はっ。小夏なんて、何着ても変わんねーじゃん? それに、ユリさんには負けるっての」


「ユリ……? だ、誰よそれ!」


そんな名前、今初めて聞いたんだけど。

てか、涼太から女子の名前が出てきたことに、かなり衝撃をうけてる。


すると、涼太がふふんっと得意気な顔をしてみせる。



「すっげぇ美人な人だ。まっ、小夏は知らねぇだろーけどな?」



涼太ってばいつの間にそんな美人な人を見つけたの!?



「いいよいいよ、知らなくても! この浴衣、今度着る時は、好きな人と来る時に着るもん!」


「……っ、そんな奴いるわけないだろ! 小夏のことが好きな男なんか!」



私と涼太はお互いに売り言葉に買い言葉を繰り返しながら会場へと足を運んだ。


赤提灯がぶら下がる会場をぶーぶー文句を浴びせながら涼太と並んで歩いた。


それにしても、涼太はやたらキョロキョロしながら歩いている。



「はぐれんなよ……? 迷子になっても、探してやんねーからな」


「もう子供じゃないんだから、なりませんよーだ!」



からんころんと下駄の音を鳴らして歩く私へ、照れくさそうな顔をする涼太が何度も人混みの中で振り返った。