「白坂凪のことは……本当は、ガキの頃から知ってる……」
ポツリと絞り出した涼太の声に、私は弾けるように顔を上げた。
「それどういうこと……? だって、涼太……白坂くんと遊んだりしたことなんか、一度もなかったじゃん」
私と涼太はいつも決まってふたりで遊んだ。
時には同じ学校の近所の子もいたけれど、必ず私達は一緒だったのだ。
チョークで絵を描いたり、涼太が虫取りに行って捕まえた殿様バッタを見せてもらったり、涼太は嫌がったけど、小さな庭にレジャーシートを敷いておままごとだってした。
戦隊ヒーローごっこをした時は、涼太が容赦なく悪役にされた私を叩くから喧嘩もしたし、鬼ごっこではすぐに涼太に捕まって鬼ばっかりやらされた。
そうやって、巡りゆく季節の数だけ同じ足跡を残してきた。
その思い出に、白坂凪という男の子は、私と涼太の間には存在しなかった。