「水瀬、戻ろ?」
「……えぇ……っ、あの……ちょっと!?」
私のよく知るクラスメイトの白坂くんに戻ったと思ったのも束の間、パシッと掴まれた手を強引に引っ張っていく。
「本当、涼太くんってズルいよね」
「え?」
私のよく知る声のトーンで白坂くんが呆れ気味に言った。
ピタリと足を止めると、こっちを向いた白坂くんは一瞬、目を細くして私を見つめる。
「水瀬のこと独り占めしてるから」
「ひ、独り占めって……」
そりゃ腐れ縁だから、涼太とは自然と一緒にいる時間が長いのも当たり前で。
「意味わかる?」
わわっ! 近い……。
ん?と私に顔を近づけて問いかける白坂くんに、不覚にも鼓動が騒ぎ出す。
「わ、わかんないよ……」
ビックリした……。
あまりの近さに眩暈(めまい)が起きそうだった。
「ふーん。もっと攻めなきゃわかんないのかも?」
もうすっかり普段通りの白坂くんに戻ったらしく、顎に手を添えると、ひとり納得したように呟いた。
わかりません……。
とも言えず、結局私は白坂くんの後ろをついていき教室へと戻った。
けれど、白坂くんのその意味深な言葉のわけを、私は翌日知ることになるのだった。