「元彼っていうか、その人幼なじみだったのよ。小夏にとっての柳くんみたいな存在。ずっと一緒だったし、この先もずっと一緒にいれるって、なんの迷いもなく思ってたの。でも、振られたのはわたし……」
澪ちゃんが渇いた声を落とす。
涼太と同じような存在……と口の中で繰り返したけど、私はしばらく言葉が見つからなかった。
「澪ちゃんが振られたって……嘘でしょ……その人、目ん玉ついてますか!?」
ようやく吐き出した私の声に、澪ちゃんがケラケラ笑った。
「あははっ。目ん玉って。笑っちゃう」
深く息を吐き出して、宙を仰ぐと、澪ちゃんは続けた。
「わたしのお母さんね、身体が弱いのよ。弟を産んでからは体調も崩しやすくて……それで、わたしが弟のめんどう見ることがほとんどだったんだよね」
「あ……もしかして、寄り道しない理由って」
「そう。弟が待ってるし夕飯の支度もわたしがやることが多いから。でも、それからあんまり彼といる時間も作れなくなって」
だから澪ちゃんは、寄り道しない主義なんだとようやく納得した。



