あっ……。
保健室でのことを思い出したその直後、ぐるんと視界が回った。
爽やかな、シャンプーのような香りが舞う。
なにがどう動いたのかわからないまま、私はソファーに押し倒されていた。
「ちょっと……っ、白坂くん!? なにこれ!? 今の今まで、顔面偏差値5とか言ってたくせに……」
全然5じゃないじゃん!と、声にならない声で叫んだ。
白坂くんの唇の隙間から、咄嗟にもれたような息が私の唇にかかる。
「形勢逆転だよ?」
ソファーに膝をついて私を見下ろす白坂くんに、心臓はこれ以上ないくらい激しく動いていた。
「ちょっ、ダメ……っ、お願いだからそんなに近寄らないで!」
今はダメだったら……!
白坂くんは遠慮も躊躇いもなく私に覆いかぶさろうとする。
待って……と、私は両手を突き出した。
「は。なんで自分の女に拒まれてんの、俺」
「だって私、汗かいたから……っ、それに、さっき言った通り……女子力アップ中なの!」
違う……言いたいことはそうじゃない!



